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トイカミ

CASE 10 解説

上司の指示が、明らかに間違っている

問題

あなたは広告代理店の2年目。化粧品ブランドの広告運用を担当している。

上司から「残り予算300万円は、全額を動画広告に追加投下しろ」と指示された。

だが手元のレポートでは、動画広告のCPA(顧客獲得単価)はこの2週間で目標の約2倍に悪化している。

Q1. あなたなら、まずどうする?

  • A. 指示通り、すぐ全額を動画に投下する。上司には自分に見えていない事情があるはずだ
  • B. 指示には従うが、CPA悪化のデータをメールで共有し、懸念を記録に残してから実行する
  • C. 実行する前に、上司が「なぜ全額を動画に」と言うのか、指示の意図を確かめる

ここで、新しい事実が判明した。

上司は役員から「今期中に動画広告の実績を作れ。大型コンペの提案に必要だ」と数字を詰められていた。

さらに調べると、CPA悪化の原因は先週差し替えたクリエイティブ1本にほぼ集中していた。

Q2. この事実を踏まえて、あなたならどうする?

  • A. 全額投下を実行する。ただし悪化の原因になっているクリエイティブは即日差し替える
  • B. 段階投下を提案する。まず100万円で差し替え後の数字を確かめ、残り200万円はその結果で決める
  • C. 上司に「今回の目的は実績づくりとCPA改善のどちらが優先か」を確かめ、配分を設計し直す
まだの人は先に挑戦する(60秒)

評価されるのは結論ではなく、思考の順序

この問題に「正解の選択肢」はありません。評価されるのは、上司に従ったか逆らったかではなく、「間違っている」と感じた瞬間に何を確かめたかという思考の順序です。

第一に、論点の再定義。表面の問いは「間違った指示に従うべきか」ですが、本当の論点は「この指示はどの目的で出ているか」です。あなたはCPAという物差しで指示を見ていた。上司は「コンペに出せる動画実績」という別の物差しで動いていた。物差しが違えば、あなたの数字と上司の指示は、両方とも正しいことがあります。

第二に、前提の確認。「明らかに間違っている」と感じたときほど危険です。組織では、上司が持っていてあなたが持っていない情報(役員の意向、コンペの条件)が常にありえます。逆に、あなたのCPAデータを上司がまだ見ていない可能性もある。正誤を判定する前に、この情報の非対称を埋めるのが先です。

第三に、打ち手の非対称性。「従うか、逆らうか」の二択で考えると、設計の余地を全部捨てることになります。目的を「実績づくり」と「CPA改善」に分解すれば、原因クリエイティブの差し替え+段階投下という、両方を満たす第三の配分が作れます。上司の事情とクライアントの成果は、多くの場合トレードオフではありません。

第四に、撤退条件。段階投下でも全額投下でも、「差し替え後1週間でCPAが目標の1.2倍以内に戻らなければ配分を見直す」と先に決めて、上司と共有しておく。基準を共有した瞬間、上司との対立は共同の検証に変わります。

トイカミ様の視点

間違った指示に見えるものの多くは、別の問いへの正しい答えだ。上司を正すより先に、上司がどんな問いを解かされているかを見ろ。それが見えた者だけが、指示の上流に立てる。

よくある誤答パターン

正しさで殴る

データを突きつけて上司の誤りを証明しようとする回答。目的のズレを見ずに議論に勝っても、実行の協力は得られません。

黙って従う

懸念を飲み込んで指示通り実行する回答。失敗したとき「知っていて言わなかった」責任が、あなたの側に残ります。

二択で考える

「従うか、逆らうか」で止まる回答。目的を分解すれば両方を満たす第三の配分を設計できることを見落としています。

思考タイプについて

クイズではQ1×Q2の回答の組合せから、判断の癖を3タイプ(軍師タイプ・城主タイプ・先鋒タイプ)に整理して返しています。優劣ではなく「どこから考え始めるか」の違いです。

出題・解説監修MIT Sloan School of Management MBA修了(経営戦略・マーケティング)ケース問題・解説は、MBA課程のケースメソッドの型に基づいて監修しています。