
CASE 04 解説
新店舗、駅前か郊外か
問題
あなたは12店舗を展開するカフェチェーン「コトリ珈琲」の出店担当。
次の新店舗候補は2つ。駅前物件(15坪・家賃月80万円)と、駐車場付きの郊外ロードサイド物件(30坪・家賃月35万円)だ。
社長からは「来週の役員会までに、どちらかを理由付きで推薦してくれ」と言われている。
Q1. あなたなら、まずどうする?
- A. 駅前を推す。人通りの多さは最大の武器。物件が埋まる前に申込の準備を進める
- B. 郊外を推す。家賃が半分以下なら、客足が読みを外しても致命傷になりにくい
- C. 推す前に、両方の立地で「1日の客数×客単価」がどこまで見込めるかを概算する
ここで、新しい事実が判明した。
郊外候補地の隣接区画に、2年後の開業を目指す大型商業施設の建設計画があると判明した。
ただしまだ着工前で、施設内にカフェが数店入る可能性も含め、詳細はこれから詰まる段階だ。
Q2. この事実を踏まえて、あなたならどうする?
- A. 郊外に決める。商業施設が開けば人の流れは一変する。物件が埋まる前に申し込む
- B. 駅前を推す。着工前の計画に2年分の家賃を賭けるのは分が悪い
- C. 郊外を本命に格上げしつつ、計画の確度を確かめ、フリーレント等の契約条件を交渉する
評価されるのは結論ではなく、思考の順序
この問題に「正解の立地」はありません。評価されるのは「駅前」「郊外」という結論ではなく、性質の違う2つの物件を同じ土俵に載せて比べる設計ができているかです。
第一に、論点の再定義。問いは「どちらの立地か」ですが、本当の論点は「その家賃を、どういう売上の構造で回収するか」です。カフェの家賃は売上の10〜15%が一つの目安。家賃80万円の駅前なら月商530〜800万円、営業25日で日商21〜32万円が必要です。客単価700円と置けば1日300〜450人。15坪・20席では座席だけで1日15回転以上が必要になり、テイクアウトをどこまで取れるかが成立条件だと、概算だけで見えてきます。
第二に、郊外側の方程式。家賃35万円なら必要月商は230〜350万円、日商およそ10〜14万円です。駐車場ありの30坪では客の滞在は長く、回転では稼げません。フードを付けて客単価900〜1,000円に上げ、1日100〜120組を取る設計になる。同じ「カフェ」でも、駅前と郊外では成立させる数式がまったく別物です。
第三に、不確実情報の扱い。商業施設の計画で郊外に傾いた人は、その計画の「確度」と「時期」を確かめたでしょうか。開業が2年後なら、それまでの24ヶ月×35万円=840万円の家賃を先に払う話でもあります。一方で、不確実な好材料は捨てる必要もありません。フリーレントや賃料改定条項など契約条件に変換すれば、「当たれば大きく、外れても浅い」形に作り替えられます。
最後に、撤退条件。どちらを選ぶにせよ、「開業6ヶ月で日商が想定の7割を切ったら業態と営業時間を見直す」のように、見直しの基準を先に決めておく。立地そのものは後から変えられないからこそ、決め打ちを検証可能な意思決定に変える一手が効きます。
トイカミ様の視点
家賃とは場所代ではない。まだ来ていない客を先に買う前払いだ。駅前は高く大量に、郊外は安く少なく買っている。お前はいま、何人をいくらで買ったのか言えるか。
よくある誤答パターン
家賃だけで比べる
家賃の差額だけを見て「郊外が得」と結論する回答。売上の天井を無視した比較は、比較になっていません。
通行量=客数と見る
駅前の人通りのうち、店に入るのは一部です。通行量から入店率・客単価まで落とす概算がないと評価されません。
未来を確定扱い
商業施設の「計画」を開業確実と置いて即決する回答。確度と時期を確かめる一手がなければ、賭けと同じです。
思考タイプについて
クイズではQ1×Q2の回答の組合せから、判断の癖を3タイプ(軍師タイプ・城主タイプ・先鋒タイプ)に整理して返しています。優劣ではなく「どこから考え始めるか」の違いです。
出題・解説監修:MIT Sloan School of Management MBA修了(経営戦略・マーケティング)。ケース問題・解説は、MBA課程のケースメソッドの型に基づいて監修しています。
