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トイカミ

CASE 02 解説

3年連続赤字。撤退するか?

問題

あなたは地方スーパー「ひだまり屋」の経営企画担当。3年前に始めた高齢者向けの惣菜宅配事業を任されている。

宅配事業は3年連続の赤字で、直近年度の赤字は約2,000万円。本業のスーパー部門の利益を食い続けている。

社長から「撤退すべきか、来週の役員会までに結論をまとめてくれ」と言われた。

Q1. あなたなら、まずどうする?

  • A. 撤退を進言する。3年やって黒字化しない事業に、4年目を与える理由がない
  • B. 撤退はしない。配送エリアの縮小と注文最低額の引き上げで、まず赤字を止める
  • C. 決める前に「赤字の中身」と「宅配が本業に運んでいる価値」を確かめる

ここで、新しい事実が判明した。

撤退する場合、配送委託契約の中途解約違約金と専用設備の処分費で約1億円——年間赤字の5倍のコストがかかることが分かった。

一方、委託契約の満了まで残り2年。満了時なら違約金なしで撤退できる。

Q2. この事実を踏まえて、あなたならどうする?

  • A. それでも今すぐ撤退する。1億円は痛いが、先送りは傷を深くする
  • B. 満了での撤退を確定させ、残り2年は赤字の最小化に徹する
  • C. 残り2年を検証期間にする。黒字化の条件を数字で決め、届かなければ満了で撤退する
まだの人は先に挑戦する(60秒)

評価されるのは結論ではなく、思考の順序

この問題にも「正解の選択肢」はありません。撤退でも継続でも、評価されるのはその結論を支える思考の順序です。

最初の分かれ目は、論点の再定義。「撤退すべきか」という二択に見えますが、撤退コストが判明した時点で、実際の選択肢は「今やめる(違約金と処分費で約1億円)」「満了でやめる(残り2年の赤字約4,000万円と処分費は残るが、違約金は消える)」「条件を切って続ける」の3つ以上に増えています。二択のまま考え続けた人は、問いの形に縛られています。

次に、数字の仕分け。過去3年の累積赤字はサンクコスト(埋没費用)で、これからの判断材料にはなりません。判断に使えるのは、将来動くキャッシュだけ。「3年も赤字だったから」という理由づけは、感情としては自然でも、意思決定の根拠としては減点対象です。

さらに、事業単体のPLの外側。宅配の利用者が店舗でも買い物をしているなら、撤退は本業の売上も削ります。逆に、宅配が本業と固定費を分け合っているなら、やめても浮くコストは見た目より小さい。撤退判断は「単体で赤字か」ではなく「やめたとき、会社全体の数字がどう動くか」で行います。

最後に、継続を選ぶなら条件を切ること。「満了までに1配送あたりの粗利を○円まで上げる。届かなければ違約金ゼロのタイミングで撤退する」——期限と数値のない継続は、意思決定ではなく先送りです。

トイカミ様の視点

「やめる勇気」という言葉に酔うな。本当に問われるのは、出口の値段を知った上で、残り時間を何に使うかだ。撤退は勇気ではない。設計だ。

よくある誤答パターン

3年で判断

「3年赤字だから撤退」は期間を理由にした思考停止。赤字が改善傾向か悪化傾向かで、結論は逆転しえます。

過去を数える

積み上がった赤字はサンクコスト。判断に使えるのは将来のキャッシュだけ、という区別が抜けると議論が濁ります。

単体PLで見る

宅配単体の損益だけで切ると、店舗への送客や地域の信頼といった本業への波及を無視した結論になります。

思考タイプについて

クイズではQ1×Q2の回答の組合せから、判断の癖を3タイプ(軍師タイプ・城主タイプ・先鋒タイプ)に整理して返しています。優劣ではなく「どこから考え始めるか」の違いです。

出題・解説監修MIT Sloan School of Management MBA修了(経営戦略・マーケティング)ケース問題・解説は、MBA課程のケースメソッドの型に基づいて監修しています。