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トイカミ

CASE 06 解説

在庫の山。値引きして売るか?

問題

あなたは中堅アパレルブランドの商品企画担当。この冬は記録的な暖冬で、冬物コートを中心に定価総額2億円分の在庫が倉庫に積み上がっている。

春物の入荷まではあと6週間。倉庫の保管費もかさみ始め、現場からは「早く場所を空けてほしい」と言われている。

部長から「値引きして捌くのか、方針を明日までに出してくれ」と言われた。

Q1. あなたなら、まずどうする?

  • A. すぐ50%オフのセールを打つ。春物が入る前に一気に現金化する
  • B. 値引きはしない。来季に持ち越して、定価で売れる時期を待つ
  • C. 決める前に「どの在庫が、なぜ売れ残ったのか」を分解して確かめる

ここで、新しい事実が判明した。

売上の4割を占める主要取引先の百貨店から「大幅な値引きはブランドイメージを損なう。うちの売場では困る」と難色を示す連絡が入った。

一方で在庫の内訳を見ると、売れ残りの7割は定番色の主力ラインではなく、今季限りのトレンド色に集中していた。

Q2. この事実を踏まえて、あなたならどうする?

  • A. 販路を変えて売り切る。取引先の売場とは切り離したアウトレットやオンラインで一気に処分する
  • B. 値引き幅を抑え、社員販売と一部処分にとどめる。残りは来季に持ち越す
  • C. 在庫を切り分ける。定番色は来季に持ち越し、トレンド色だけを別チャネルで処分する
まだの人は先に挑戦する(60秒)

評価されるのは結論ではなく、思考の順序

この問題に「正解の選択肢」はありません。値引きの可否を即答することではなく、2億円という数字を分解してから決める、その思考の順序が評価されます。

第一に、論点の再定義。部長の問いは「値引きするか」ですが、本当の論点は「この在庫の正体は何か」です。暖冬のせいで売れなかったのか、色や型を外したのか、そもそも作りすぎたのか。原因が違えば打ち手は逆になります。追加情報で「売れ残りの7割はトレンド色」と判明した瞬間、在庫は一枚岩ではなくなりました。

第二に、見えないコストの計上。「値引きしない」は無料の選択肢ではありません。保管費、来季までの陳腐化、寝てしまう資金。持ち越し案を選ぶなら、これらのコストを値引きロスと同じ土俵で比較して初めて意思決定になります。守りの選択にも値札はついています。

第三に、制約の翻訳。取引先の難色は「値引き禁止」ではなく「取引先の売場とブランドの見え方を守れ」という設計条件です。定番色は持ち越してブランドを守り、来季に残らないトレンド色だけ別チャネルで処分する——制約を打ち手の形に翻訳できるかが分かれ目です。ただし販路を分けても客の目はつながっている時代です。その露出リスクまで言及できれば上位の回答です。

第四に、撤退条件。処分を始めるなら「何週目までに消化率が何%を切ったら値引き幅を深くする」を実行前に決めておく。期限が6週間と切られている以上、様子見の各1週間には値段がついています。

トイカミ様の視点

在庫は失敗の残骸ではない。客が「買わなかった理由」が2億円分、記録された資料庫だ。急いで捌けば現金は戻るが、理由は消える。捌き方の前に、読み方を決めろ。

よくある誤答パターン

在庫を一枚岩で見る

2億円をひとつの塊として扱う回答。定番色とトレンド色では最適な打ち手が逆になることを見落としています。

持ち越しをタダと思う

値引きしない選択にも保管費・陳腐化・資金の固定化というコストがあり、それを数えずに選ぶと減点されます。

制約を結論にする

「取引先が反対だから値引きは無理」で止まる回答。制約は打ち手の設計条件であり、思考を止める理由ではありません。

思考タイプについて

クイズではQ1×Q2の回答の組合せから、判断の癖を3タイプ(軍師タイプ・城主タイプ・先鋒タイプ)に整理して返しています。優劣ではなく「どこから考え始めるか」の違いです。

出題・解説監修MIT Sloan School of Management MBA修了(経営戦略・マーケティング)ケース問題・解説は、MBA課程のケースメソッドの型に基づいて監修しています。