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トイカミ

CASE 03 解説

人手不足。採用か、自動化か

問題

あなたは従業員28名の金属加工の町工場で、先代から経営を引き継ぎつつある立場だ。

この1年で職人が4人辞め、残業は月30時間を超え、納期遅れも出始めた。

求人は半年出して応募2件で、先代からは「人を増やすか、機械を入れるか、来月の銀行面談までに決めろ」と言われている。

Q1. あなたなら、まずどうする?

  • A. 自動化に踏み切る。補助金と借入で、人手のかかる工程に機械を入れる
  • B. 受注を絞る。今の人数で回る量まで仕事を減らし、まず現場を立て直す
  • C. 決める前に「なぜ人が辞め、なぜ応募が来ないのか」を確かめる

ここで、新しい事実が判明した。

辞めた職人4人に理由を聞くと、1位は給与ではなく「設備が古くて仕事がきつい」だった。

実際、主力の機械は導入から25年が経ち、重い材料の運搬も段取り替えもすべて手作業だった。

Q2. この事実を踏まえて、あなたならどうする?

  • A. 迷いは消えた。借入を組み、設備を一気に刷新する計画を銀行に出す
  • B. 投資は小さく始める。最もきつい1工程だけ機械化し、残業と離職が減るか3ヶ月で検証する
  • C. 機械の選定より先に、残った職人に「どこが一番きついか」を聞き、入れる順番を現場と決める
まだの人は先に挑戦する(60秒)

評価されるのは結論ではなく、思考の順序

この問題にも「正解の選択肢」はありません。評価されるのは、「採用か自動化か」という与えられた二択を、そのまま受け取らなかったかどうかです。

第一に、論点の再定義。問いは「足りない人手をどう補うか」ですが、本当の論点は「なぜ人が定着しないのか」です。採用は蛇口、離職は排水口。栓を放置したまま蛇口を増やしても、水は溜まりません。

第二に、前提の確認。離職理由の1位が「設備が古くて仕事がきつい」なら、採用と自動化は対立しません。きつい工程への設備投資は、省人化の打ち手であると同時に「人が辞めない・応募したくなる職場」への投資でもある。追加情報を見て二択そのものが消えた人は、前提が選択肢を作り替えることを体感しています。

第三に、打ち手の非対称性。「借入で全工程を一気に刷新」と「最もきつい1工程から入れて効果を検証」は、同じ自動化でも外したときの傷の深さが桁違いです。さらに、どの工程から入れるかを現場の職人と一緒に決めれば、その進め方自体が定着の打ち手になります。

第四に、撤退条件。導入後3ヶ月で残業が月何時間減ったら次の工程に進むのか、応募数が変わらなければ採用の何を変えるのか。数字の線を実行前に引いておくことで「決め打ちの投資」が「検証可能な意思決定」に変わり、その線はそのまま銀行面談での返済計画の説明にもなります。

トイカミ様の視点

人手不足の正体は、たいてい「人が来ない」ではなく「人が去る理由を放置していること」だ。機械を入れる価値は人を減らすことではない。残った人間が辞めない理由を作ることにある。

よくある誤答パターン

二択のまま考える

「採用か自動化か」を出された枠のまま比べる回答。離職という第三の変数を見た瞬間、この二択は崩れます。

金額から入る

「いくらかかるか」の試算から始める回答。どの課題を解く投資かが決まる前の見積もりは、精度が出ません。

人を責める

「最近の若手は続かない」と人側に原因を置く回答。構造で説明できることを性格で説明すると、打ち手が消えます。

思考タイプについて

クイズではQ1×Q2の回答の組合せから、判断の癖を3タイプ(軍師タイプ・城主タイプ・先鋒タイプ)に整理して返しています。優劣ではなく「どこから考え始めるか」の違いです。

出題・解説監修MIT Sloan School of Management MBA修了(経営戦略・マーケティング)ケース問題・解説は、MBA課程のケースメソッドの型に基づいて監修しています。