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トイカミ

CASE 08 解説

広告予算、新規と継続どっちに張る?

問題

あなたは定期購入型のD2C化粧品ブランドのマーケティング責任者。月の広告予算は600万円。

社内レポートでは、初回購入者の定期継続率は45%。顧客生涯価値(LTV)は獲得コスト(CPA)の3倍と報告されている。

来月の予算編成まで1週間。経営会議で「新規獲得と既存客の継続施策、どちらに寄せるか決めてくれ」と言われた。

Q1. あなたなら、まずどうする?

  • A. 新規獲得に寄せる。LTVがCPAの3倍あるなら、獲れるうちに獲るのが合理的
  • B. 継続施策に寄せる。新規の獲得単価は上がる一方で、既存客を守るほうが堅い
  • C. 決める前に、LTVと継続率が「いつの・どの顧客の」数字なのかを確かめる

ここで、新しい事実が判明した。

解約済みの定期会員が「継続中」のまま数えられていた、LTVの集計ミスが見つかった。

修正後の継続率は45%ではなく28%。LTVはCPAの3倍ではなく、1.4倍まで縮む。

Q2. この事実を踏まえて、あなたならどうする?

  • A. 新規は続ける。ただしCPA上限を、修正後のLTVでも回収できる水準まで引き下げる
  • B. 新規を絞って継続施策へ。まず継続率28%の原因である解約理由を突き止めて潰す
  • C. 配分の前に分解する。どのチャネル経由の客が続いているかを見て、残す新規と切る新規を分ける
まだの人は先に挑戦する(60秒)

評価されるのは結論ではなく、思考の順序

この問題にも「正解の配分」はありません。評価されるのは、新規か継続かという結論ではなく、結論の土台にある数字をどう扱ったかです。

第一に、論点の再定義。会議の問いは「新規か継続か」ですが、本当の論点は「広告費1円あたりの回収がどこで最大になるか」です。そしてその計算は、LTVという入力データの上に立っています。入力を検証しないまま配分だけを議論しても、答えの確からしさは入力の確からしさを超えられません。

第二に、数字の出どころ。継続率が45%から28%に修正された瞬間、新規獲得の経済性は3倍から1.4倍まで縮みました。追加情報の前後で判断を変えた人は、「数字は事実ではなく、誰かの集計結果である」という感覚を持っています。社内データほど疑われずに独り歩きしやすい、という点も含めてです。

第三に、分解。「新規を止めるか続けるか」の二択は粗すぎます。獲得チャネルや顧客層で分ければ、修正後の数字でも採算が合う新規と、明らかに赤字の新規が混ざっているはずです。継続施策も同じで、解約理由を特定する前に予算を積めば、そのまま溶けます。

第四に、実行前の基準。修正後LTVから逆算したCPA上限、何ヶ月で回収できなければ縮小するかの線、そして集計ミスを繰り返さないためのデータ検証の手順。この3つを先に決めておけば、「決め打ち」は「検証可能な意思決定」に変わります。

トイカミ様の視点

一番たちの悪い失敗は、間違った数字で正しく計算することだ。電卓は合っている。入れた数字が違うだけ。だから緻密な者ほど、盛大に外す。

よくある誤答パターン

数字を信じ切る

社内のLTVを検証せずに配分を最適化する回答。入力が間違っていれば、計算がどれだけ精緻でも結論ごと間違えます。

二択で止まる

新規か継続かの二択のまま考え続ける回答。チャネルや顧客層で分解すれば、新規の中にも残す部分と切る部分があります。

止めて終わる

「継続率が低いから新規停止」で終わる回答。低い原因と、何が直れば再開するのかまで言えて初めて評価されます。

思考タイプについて

クイズではQ1×Q2の回答の組合せから、判断の癖を3タイプ(軍師タイプ・城主タイプ・先鋒タイプ)に整理して返しています。優劣ではなく「どこから考え始めるか」の違いです。

出題・解説監修MIT Sloan School of Management MBA修了(経営戦略・マーケティング)ケース問題・解説は、MBA課程のケースメソッドの型に基づいて監修しています。